2017年5月19日金曜日

就学と、就学猶予



自閉症についての記事を見つけました。

一年ほど前に、東京経済ONLINEに掲載されたものです。

記事は、

「発達障害を抱える子どもたちは、小学校入学でまた壁にぶつかっている現状を知っていますか?」

という言葉から、はじまっています。

そりゃもう、いやというほど知っていますとも、とつぶやきながら読み始めました。

途中を一部、引用させてもらいます。

支援学校・学級へ押し出される子どもたち 
発達障害に寄り添って小学校を「壁」にしない
(2016年05月24日 東京経済ONLINE)



嗅覚過敏で給食配慮

『自閉症・発達障害を疑われたとき・疑ったとき』などの著書がある小児科医の平岩幹男さんによれば、就学時猶予に多くの自治体は消極的で、一切認めないところもあるという。


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「1年遅らせることによりお子さんが安心して学校へ通えそうならば、行政に認められないと押し切られそうになっても、あきらめずにアピールしてください。医師に意見書を書いてもらうなど、専門家の力を借りるのも一つの手立て」(平岩さん)

発達障害で言葉や生活動作に心配があった長男(7)を療育により少しずつ伸ばしてきた神奈川県の母親は、「就学時猶予」の制度を使って今春、1年遅れで長男を小学校に入学させた。だが、「認められるまでに相当のエネルギーを消耗しました」。手続きのため教育委員会や相談センターなど複数の窓口をまわり、「猶予は認められない」と電話が来ても、再審査を申し出て、認められた。

長男は嗅覚が過敏で、海産物と牛乳を一切受け付けない。食べたら吐いてしまう。給食の対応のため、母親は学校の先生に医師の診断書を見せ、アレルギーとは違い、また単なる好き嫌いでもないことを説明した。

(引用元 http://toyokeizai.net/articles/-/119350?page=2)


記事のなかの平岩先生は、17年前に、あだきち君の診断をしてくださった先生でもあります。

就学前、私も就学猶予について考えて、平岩先生に相談したことがありました。
そのときに、平岩先生は記事の中のお言葉と同じようにアドバイスしてくださったのを覚えています。

あのときは、本当に悩みました。

就学時健診、就学相談を迎える年度に入っても、あだきち君は、まだトイレの自立もできておらず、深刻な偏食を抱えていました。限られた、短い単語での指示は理解しますが、言葉による相互のコミュニケーションは、ほとんど不可能な状態でした。

我が家としては、地元の小学校の特殊学級への進学を希望していましたけれど、この状況では、やっていくのはとても難しいのではないかと、思いました。

けれども、特別支援学校は自宅から遠く、学バスは走っていますが、片道一時間半ほども乗らなくてはならないと聞いていました。毎日三時間のバス通学。あだきち君は、車が大好きですが、その三時間、発達を促すために一刻も惜しいような時期に(と当時の私は思っていました)、ただ無言で外の景色を眺めて過ごすのは、あまりにも時間の無駄のように思えてなりませんでした。

もう一つ、我が家には、あねぞうさんの問題もありました。

あだきち君より一つ年上のあねぞうさんは、地元の小学校に進学していましたが、病気のために、なかなか普通に登校できない状態でした。入院になれば、一ヶ月以上も欠席が続きますし、退院しても、状態が落ち着くまでは、遅く登校して早退する日々が続きます。もちろん私の送り迎えつきです。

そういう状況で、問題山積み状態のあだきち君が、遠くの街の養護学校に入ってしまえば、私(おかーさん)のキャパが足りず、早晩パンクしてしまうだろうとうとことは、容易に想像できました。

けれどもあだきち君が、あねぞうさんと同じ地元の小学校(自宅から徒歩三分)に入ってくれれば、どちらかに何かあっても、すぐに駆けつけることができます。

結局、ものすごく考えた末に、おそらく手続きで大変な思いをするであろう就学猶予の申請はやめて、地元小学校の養護学級進学を希望しました。就学相談で、担当の方々といろいろ話し合い、事情を理解していただいて、なんとか希望を受け入れてもらうことができました。

もちろん、入学後は、ほんとうに大変なことがたくさんありました。
小学校六年間、私は毎日学校に通って、あだきち君のクラスに入り、一緒に勉強したり、生活したりしました。

ときには、あねぞうさんや、乳児だったほげ子さんも一緒に、支援学級に入って、授業に参加することもありました。きょうだいのことを、学校の先生がたに広く理解していただけたからこそ、可能になった対応だと思います。当時の先生方には、感謝の気持ちでいっぱいです。

ただ、今考えると、あのとき就学猶予を申請しても、よかったんじゃないかと思うのです。

療育教室にも通っていましたので、入学前まで、身辺自立やコミュニケーションの力を、もうすこしじっくりと育ててから、集団に入っていれば、あだきち君も私も、もっと余裕をもって学校に適応できたのかもしれません。

そして、しっかりと力を積み上げた上で、特別支援学校の高等部に入学することができていたら、職業訓練的な授業で、もっといろいろなスキルを身につけて、人生の幅を広げることもできたのじゃないかと……

もう、終わってしまったことなので、考えてもしかたがないことではあります。

けれども、これから成長していくお子さんたちのためにも、それぞれの発達状況にとって、より適切な道筋が、葛藤なしに選べるような時代がきてくれるといいなと、切に思います。


(平岩先生のご著書、残念ながら、私はまだ拝見していません。紙の本を読むのが視力的にとてもきびしいので、ひたすらKindle化の希望をポチっております)