お題は「いえ」。住めるのかは不明。 |
いささか悲しくなったので(なぜ悲しくなったかは、後で書きます)、読み直そうと思って取っておいたのですが、みつかりません。なのでネットに引用されていた記事を、引かせてもらいます。
読書はしないといけないの?
(東京都 大学生 21歳男性)
「大学生の読書時間『0分』が5割に」(2月24日朝刊)という記事に、懸念や疑問の声が上がっている。
もちろん、読書をする理由として、教養をつけ、新しい価値観に触れるためというのはあり得るだろう。
しかし、だからと言って本を読まないのは良くないと言えるのだろうか。
私は、高校生の時まで読書はまったくしなかった。
それで特に困ったことはない。
強いて言うなら文字を追うスピードが遅く、大学受験で苦労したくらいだ。
大学では教育学部ということもあり、教育や社会一般に関する書籍を幅広く読むようになった。
だが、読書が生きる上での糧になると感じたことはない。
役に立つかもしれないが、読まなくても生きていく上では問題はないのではないかというのが本音である。
読書よりもアルバイトや大学の勉強の方が必要と感じられるのである。
読書は楽器やスポーツと同じように趣味の範囲であり、読んでも読まなくても構わないのではないか。
なぜ問題視されるのか。
もし、読書をしなければいけない確固たる理由があるなら、教えて頂きたい。
読み返してみて、やっぱり、なんとも言えない気持ちになります。(´・ω・`)
この学生さんは、未知の知識や思索に触れ、自分でも思索することで、ワクワクしたり、人生が大きく広がるような思いを一度もしないまま、大学生活を送っておられるのでしょうか。
別に読書だけでなく、スポーツや音楽でも、なんでもいいのですが、自分が想定していなかった、思いも寄らない、つまり"役に立つ"とか"稼げる"とか、そういうことで用意されたものではない「何か」に触れて感動することで、新しい視点を得たり、心がゆさぶられたりしたことは、ないのでしょうか。
「読書よりもアルバイトや大学の勉強の方が必要」
というのは否定しません。収入を得て、将来の仕事のためにしっかりと知識を身につけるのは、とても大切なことです。お金なかったら困りますし、学業を怠って卒業できなくなったら、大変です。きっと、いろいろご苦労もなさっているからこその、こういうご発言なのでしょう。
でも、
「読書は楽器やスポーツと同じように趣味の範囲」
といって、ひとくくりにして切り捨てる感受性については、若いのに残念な方だなあと感じてしまうんですよね。
まあ、ババアのお節介ですね。(´・ω・`)
人生それぞれですから。
本読んで音楽やったって、幸せになるという保証は全くありませんし、学生時代のアルバイト経験が、のちの人生の精神的な糧になることだって、いくらでもあります。
でも、この大学生のおっしゃるのと同じようなことを、ニュアンスは少し違いますけども、かつて私が若かったころに、親の世代に散々言われてきたんですよね。
「文学や音楽(趣味)ではメシは食えない」
「本ばっかり読んで何になる?」
「まあ女だから、文学部でもいいのか(どうせ結婚して家庭に入るだけだから)」
みたいな感じで。
まだ年若い男性が、かつての昭和ヒトケタ世代の方々と同じようなことを言わなくてはならないような時代になっちゃった、ということなんでしょうか。(´・ω・`)
あとは、教養を重視し、尊重する風潮が、すでにここの国から消え去りつつあるということかもしれません。そんなものを本気で尊重していた時代が、この国に本当にあったのかと問われると、ちょっと言葉につまりますけども。
でも私が大学生のころって、本をあまり読んでいないというのは、わりと恥ずかしいことでしたし、「衒学」「ペダンティック」なんて言葉も、まだ生存していました。
いまの大学生は、教養よりも、お金と甲斐性を衒うのでしょうか。
学生さんとあまり付き合いがないので、そのあたり、よく分かりません。こんど詳しそうに人に聞いてみます。
(__).。oO
教養といえば、今日はなんだか、すごいニュースを見かけました。
「学芸員はがん。連中を一掃しないと」 山本地方創生相
http://www.asahi.com/articles/ASK4J5R1QK4JPTJB00H.html
山本幸三・地方創生相が16日、大津市内のホテルで開かれた滋賀県主催の地方創生セミナーで、文化財観光の振興をめぐり見学者への案内方法やイベント活用が十分でないことを指摘し、「一番がんなのは学芸員。普通の観光マインドが全くない。この連中を一掃しないと」と発言した。
学芸員は博物館法で定められた専門職員で、資料の収集や保管、展示、調査研究などを担う。今回の発言はセミナーでの講演後、滋賀県長浜市の藤井勇治市長から「インバウンド観光振興について助言を」と質問された際にあった。外国の有名博物館が改装した際のことを引き合いに出し、「学芸員が抵抗したが全員クビにして大改装が実現した結果、大成功した」などとも述べた。 (後略)
2017年4月16日20時21分 朝日新聞DIGITAL
この記事には驚きました。
学芸員の仕事内容を考えれば、この方々を一掃したら、文化財を安全に後世に残すことが難しくなると思うのですが、集客のためには、そういう配慮は、もはや必要ないということなのでしょうか。
それ以前に、文化財について、幅広く研鑽を積んで職に就いているであろう専門職員に対する、侮蔑的な言動には、およそ教養の気配が感じられません。人としての品格も疑われます。言うに事欠いて、他人に向かって、しかも国の文化にとって貴重な資料を守り研究するために働いている方々に向かって、「がん」呼ばわりはないでしょう。
がん、すなわち悪性新生物とは、変異してしまった細胞が増殖し続けて、周囲の正常な組織をぶちこわして、最悪、人間本体を死に至らしめる存在です。この地方創生相さんは、学芸員が一体何を破壊し、死に至らしめると考えたのか。文化財でないことは間違い有りません。
では地方創生の可能性が破壊されるというのでしょうか。
でも、私なら、こういうことをおっしゃる方の発案による文化財展示のイベントには、あまり行きたいと思いません。猥雑さや陳腐さに胸が痛んで、がっかりする予感がしますから。
いや私自身、そんな高尚な人間ではありませんけども、この大臣のおっしゃる、
「普通の観光マインド」
みたいなものは、持ち合わせてないように思うので、遠慮しておくことにします。
歴史的な資料である文化財などを「見たい」と思う人を増やすためには、学芸員の一掃やハデなイベントではなく、そういうものの価値を理解する教養を深めるための、しっかりとした教育が必要だと思うんですけともね。
ガンバレ文部科学省。
(´・ω・`)
あと、最初に引用した大学生のようなタイプの方々は、たぶん、文化財を見に博物館に行くことは、ないように思います。アルバイトと学業、忙しそうですし、文化財が人生の役に立つことも、なさそうですから。
あの学生さん、山本幸三・地方創生相と、文化と読書について、対談してみたらいいのに。