2016年7月13日水曜日

子宮頸がんワクチンについて思うこと・我が家の場合



子宮頸がんワクチンの摂取後、副作用とも思われる症状で苦しんでいる方々が、国と製薬会社に対して、集団訴訟を起こすことになったという報道がありました。



子宮頸がんワクチン問題 27日に集団提訴へ

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160713/k10010593041000.html



苦しんでいる方々の状況は、マスコミやネットの情報で知る限りでは、ほんとうに厳しく、胸がつぶれるような思いにかられます。


健康に生まれ育ってきて、その健康を維持するために受けた、たった一回の予防注射をきっかけに、人生が大きく暗転してしまったのだとしたら、ご本人も家族も、どれほどやりきれないことでしょう。


この問題は、こうした厳しい症状が、ほんとうにワクチンの副作用であるのかどうかが明確でないとされているために、当事者の方々を、ますます厳しく追い込んでいる状況にあるようです。


副作用ではないとする意見の方々は、こうした症状が、若い女性にはよくある、心因性のものであるという見方をする方々もおられるようです。


ワクチンの副作用なのか。
ワクチンではなく、心因性、あるいはその他の何かに、原因があるのか。


どれが本当であるのかは、私には判断のつかないことですが……


確実に言えるのは、この問題で、苦しみ抜いている女性たちと、その家族がいるということです。


そして、予防接種というものが、基本的には、個人の幸せを守るためというよりも、社会全体の安全を高めるために実施されるものであるということ。


社会の安全性が高まれば、もちろん、住民も安全に暮らせる確率が高くなるわけですが、その安全性を優先させるために、ごくまれに起こる可能性のある、深刻な副作用については、しかたがないこととして扱われることになります。


何万人、何十万人という人が健康でいられることと、ほんの数人の人生が破壊されることとを、てんびんにかけて、多くの人の健康のほうが大事であるという政治的な判断が、予防接種の制度を作り、支えているのだと思います。


そのことに、異を唱えるつもりはありません。
私も、感染症の恐ろしさは、よく知っています。

昔の日本では、三種混合ワクチンで防がれている病気によって、多くの子どもたちの命が失われていました。私も自分の親から、町の子どもたちがジフテリアでばたばたと亡くなっていった話を聞いて育っています。

昔の話ばかりではありません。

あねぞうさんが、免疫系の病気を発症した18年前、ちょうど日本中でインフルエンザ脳症が多発していました。同じ小児病棟に、人工呼吸器をつけた、脳死状態の子が何人も入院してきて、そして、亡くなっていきました。ほんの数日前まで、元気に遊んでいた幼子を失ってしまう、家族の悲嘆、絶望……ほんとうにやりきれない、恐ろしい光景でした。


予防接種が、多くの人々の命と人生守っていることは、間違いなく事実です。


けれども、政治的判断で、「しかたがない」とされてしまう、ごく少数の、重篤な副作用に苦しみつづける人生が、摂取するすべての人に降りかかる可能性のあるものであることも、また事実です。



今回の問題は、裁判で解決のつくものではないと想像します。


なによりもまず、訴えている方々の症状が副作用であるのなら、それがどのような理由で起こってしまっているのか、すっかり明らかになってほしいところです。

そして、治療法や、より安全なワクチンの開発。

そう簡単にいくことではないでしょうが、それが進まなければ、この問題の本質的な進展はないと思います。


……


我が家の話になります。


この子宮頸がんワクチン、あねぞうさんが高校生のころに、主治医に話をきいて、摂取してもらおうかどうしようか、相当に悩みました。


持病を抱えて、もう十分に苦しんで育ってきているあねぞうさんが、これ以上病気をすることがないよう、ワクチンを受けるべきかと思いました。とくに、長年服用してきた、ステロイド剤や免疫抑制剤は、がんの確率を高めてしまう可能性があるものです。


けれども……

そもそも、あねぞうさんが免疫系の難病であるネフローゼ症候群を発病したのは、風疹のワクチンの接種をうけた直後だったのです。


発病とワクチンとは、因果関係はほとんど考えられないと、当時の主治医たちは話していました。同じワクチンで、同じ病気を発症した話も,まず見かけません。


ただ…根気よくネットで探すと、「なんらかのワクチン接種のしばらくあとに、ネフローゼを発症した」という話は、少数ながら、見つけられます。


ある種の免疫的な体質をもった子どもが、幼少期に予防接種を受けることで、ごくまれに、免疫異常を引き起こしてしまうこともある……そういうことなのではないかと、私は想像しています。


そんなわけで、相当悩みましたけれども、あねぞうさんには、子宮頸がんワクチンは受けないでもらいました。



ちなみに、母親である私も、自己免疫系の病気を持っており、血縁には、同じような免疫病、リウマチを持っている人もおります。


ワクチンは、感染症から社会全体を守るために、必要なものであることは間違いありません。

けれども、遺伝的に、免疫的にリスクの高いと考えられる人は、危険性が取り沙汰されているようなワクチンを受けるときには、よくよく考えるべきではないかと、個人的に思っています。


それと、今回、子宮頸がんワクチンについての提訴が行われるということで、副作用かもしれない、厳しい症状に苦しんでいる方々を、批判したり、叩いたりする意見があることには、ほんとうに心が痛くなります。

難病や障害は、ただそれと戦いながら暮らすだけでも、ほんとうにつらい局面があります。
まして社会の圧力や批判と闘いながらでは、心折れてしまう方々が出かねません。


事実があきらかになり、医療の技術が進むことを願いながら、静観したいと思います。


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