2016年8月5日金曜日

自閉症と言葉の習得・・・あだきち君の場合/ショートステイ

ショートステイ・旅行・一人の夜


今週も、あだきち君のショートステイがありました。火曜日の夜、一泊。

夜勤の方が、数時間おきに、様子を見てレポートを書いてくださっています。
穏やかに過ごして、九時半には就寝し、途中でトイレに起きるようなこともなく、朝までぐっすりだったとのこと。


あだきち君がショートステイの夜から、おとーさん、あねぞうさん、ぼげ子さんの三人も、三泊四日の旅行に出ていました。

なので、家には私ひとりきりだったのですが、あまりにも静かで、全く落ち着かず、それはまあいいのですが、本を読み出したら止まらなくなってしまい、気がついたら夜が明けていました。ほぼ完徹。

翌日水曜日は、午後三時半にあだきち君を迎えにいって、夜は療育教室というコースでした。
ヨレヨレのフラフラで、死ぬかと思いました。


しかし懲りずに、その夜も、その次の夜も、本を読んでしまい……


いま、かなりまずい体調です。(´;ω;`)


家族がいないと、過集中モードが炸裂してしまうということを、すっかり忘れていた挙げ句の、ひさびさの不摂生でした。

でも、本当に久しぶりに、小説をガッツリ集中して読めたので、ちょっと幸せです。この夏唯一の、おかーさんの娯楽ということで、大目に見てもらおうと思います(誰に?)。



自閉症児と言語生活


最近構築を開始した、おとーさんのブログのほうに、こんな記事があります。



Q.自閉症の人達はなぜ筆談ができるのに、声に出して話すことができないのですか? 


A.「自閉症」は、脳の障害に起因する、多様な症状の「コミュニケーション・認知・情報処理」障害です。
 言語について言えば、まったくコトバをもたないものから、普通に会話できるものまで、さまざまです。
文字言語をもち、音声言語をもたないタイプも、その中にはあります。 
 この場合、頭の中に[音韻(音のイメージ)]:[語彙][文法]の言語の基本要素は具わっています。
 そして、[音韻]を[文字]に[変換]して、[手]で[図形]を[書く]ことはできます。しかし、[音韻]を[音声(実際の音)]として実現するところに問題があると考えられます。 (以下略)

あだきち君が小さかったころ、よく思ったことがあります。

おとーさんが言語研究の専門家で、私(おかーさん)も、一応そちらを志したことのあるという、そんな家庭に、テコでも言葉を話そうとしないあだきち君が生まれてくるというのは、ものすごく「おもしろい」ことなんじゃないかと。


いまはかなり理解語彙や使用語彙が増えてきているあだきち君ですが、幼児期には、半年に一回ぐらい、奇跡のように突然に、単語らしきものを口にするだけででした。

2歳ちょっと過ぎたころ、突然、童謡の「アイアイ」を歌い出したことがありました。

「あいあいー、あいあーい、おさーるさーだよー」

あいまいな発音でしたが、たしかに「アイアイ」の途中までを、しっかりした音程で、あだきち君は歌ったのです。


ああ、この子はしゃべれるようになるかもしれないと、その日は完全に祝賀モードでしたけれども……


歌は、その一回歌っただけで、それから数年間、全く出てきませんでした。
こうした一回限りの奇跡は、その後も、たびたび起こりました。
(その度に、盛大にぬか喜びしては、落胆したものでしたが、いまはよい思い出です…)




なぜ、ときどき奇跡のように言葉がでて、その後、出なくなってしまうのか。



不意に言葉が出る、その言葉が日本語として聞こえる、ということは、音声を聞き取って、音韻として記憶する力はあるということだと思います。

けれども、その記憶を想起して、音声として発するところまでに、何か、大きな問題があるのではないかと思いました。

それから、言葉の意味を、音声に結びつけるということが、うまく出来ていない可能性もあるように思いました。何百回、何千回教えても、「バナナ」と言われて、二択でバナナの絵カードを選ぶというようなことが、とても難しかったからです。


そんなあだきち君ですが、ほとんど言葉を自発的にしゃべることのない状態のまま、5歳くらいで、療育教室や、公文の教材で練習し続けていた、ひらがなと数字が読めるようになっていました。さらに練習を続けて、ひらがなや数字を自力で書くことも、可能になりました。


それはつまり、聞き取った音声と、文字をくっけて記憶するということが、出来るということでもありました。


そこで、面白いことが起きました。

あだきち君は、いくら言葉を「聞かされて」練習しても、物の名前を全く覚えることが出来なかったのに、物の名前を文字にして、書いたり、読む練習をたくさんすると、覚えられるようになったのです。



バナナの絵に、「ばなな」とひらがなを添えたカードをつくり、それを、何百回も書き写させたり、読ませたり、読んで聞かせたりするうちに、1つ、また1つと、単語を覚えていくようになったのです。


最初は、1つの単語につき、数日にわたって、数百回もの読み書きの練習が必要でしたが、その語だんだん覚えやすくなって、数十回の練習で、単語を記憶できるようになっていきました。



そのころから、あだきち君は、空書(くうしょ)をするようになりました。
何か言葉を聞くと、指でひらがなを書くようなしぐさをするのです。

どうやら、聞いた言葉を、一度文字にすることで、記憶が可能になるようでした。


音声言語だけでは、たった1つの単語の習得すら困難だったのに、文字を解すると、少しづつ語彙が増えていって、片言の会話ができるようになっていったのです。


そういうわけで、あだきち君は、いまも書きの練習を中心に、言葉の勉強を続けています。




まとまらない話になりましたが、あまりにも暑いので(外の気温35度・エアコンの効きが悪い)、今回はここまでとします。