2016年8月14日日曜日

16年間の地道な療育が、あだきち君にもたらしたもの


過去の家庭内お絵描き大会のデータを探していたら、あだきち君が描いた絵も見つかりました。

2007年、あだきち君が9歳のときの絵と、その日の日記を転載してみます。

描いたのは、きついパニックのあった日でした。


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お絵描きタイム
2007年10月13日・・・あだきち君9歳(小学四年生)




よそ様の日記をぼーっとながめていたら、机の隅っこの本の間に、テーブルナイフが挟まっているのが目に入った。

朝、あだきち君が振り回して暴れているのを取り上げて、急いで隠して、そのまま忘れていたのだった。



くたびれた一日だった。


四時間睡眠。
やたらと早く目が覚めて、起きた途端にあだきち君のパニック。

散々騒いで疲れ果てて、一度眠ったけれど、起きたらまた小パニック。


キレ方は昔ほどじゃないとはいえ、体が大きくなっているから、暴れられると、やはりキツい。体力的にというよりも、神経にくる。


  このまま大きくなったら…… 


などというネガティプな思考は百害あるだけだ。


大きくなるまでに、出来ることをする。
ここまで来たのがそもそも奇跡なんだから、これからも奇跡を起こすのみだ。



・・・・・・・


昼間の動揺の余波か、夕食のときには全く手が動かず、全部家族に食べさせてもらったあだきち君だけれど、満腹して落ち着いたのか、お風呂上がりに、自分から絵を描き始めた。


描いたものを見せてくれず、あっという間に消してしまうのだけど、すきをみて、撮影させてもらった。






おにぎりに、耳が生えたもの。

でも自分で、「これはちがう」と思うのか、ナナメ線を入れている。

何度もこれを描いたあと、次にこういうものが出現した。




















ものすごい早さで描いて消してしまうので、あわてて連写した。


キツネの顔らしいのだが、耳の位置が低すぎる。やはり自分でもおかしいと思うのか、ナナメ線を引いたけれど、考え直したのか、その横に自分で「きつね」と書いていた。




あだきち君は、図形を正確に思い出して描画することに、恐らくは脳の器質上の困難を抱えている。


文字のように、書き順のしっかり入っているものは、動作として記憶して再現することができるけれども、図形だけを記憶して再現することが難しいのだ。



それでも、ここまでのものを描けるようになっているのだ。

親になかなか見せてくれないのは、自分でも苦手意識があるからだろう。間違ったものを描いていると気づいているのだ。それでも、描いていたときのあだきち君は、かなり楽しそうだった。水彩画のときほどではないけれど、表情はやわらかくゆるんでいた。


あと少し、なのではなかろうか。


描画の楽しみを手に入れることは、たぶんあだきち君の生活の質を、大きく変えるきっかけになると、私は考えている。


ものをきちんと見ること。
視覚的な注意力や記憶力が改善されること。



これらはあだきち君が抱えている生活上の困難さを、一気に軽減する可能性を持っている。毎日毎日、靴の左右をはき違えたり、次にすべきものを見失って、立ちすくんで途方にくれたりしなくても済むようになるかもしれないのである。


それは、めぐりめぐって、フォークやテーブルナイフを振り回して泣き叫ぶような苦しみをも遠ざけてくれるかもしれない。





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これから9年たったいま。


残念ながら、あだきち君は、お絵描きをそれほど好まないまま、18歳になりました。


けれども、長い間続けた、お絵描きの療育と、練習は、あだきち君の、ものの形を見る目を養ってくれました。

靴の左右を間違えることは、もうありません。

漢字を読んだり、書いたりすることは、大好きで、学校を卒業したいまでも、通所施設に漢字ノートを持っていって、練習します。


そして、当時頻繁にあったパニックは、いまでは、もう起こすことが本当に少なくなりました。

起こしても、年に一回くらいで、しかもかなり自制をしていますので、大きな混乱になることはありません。奇跡は、確かに起きました。






今年になって、あねぞうさんのiPadを借りて、お絵描きソフトでラクガキをするようになっていますが、形のあるものを描画するのではなく、ひたすらキャンパスを塗りつぶして楽しんでいるように見えます。


でも、もしかしたら、何か形を描くための、準備をしているのかもしれません。


あだきち君は、何か新しいことをはじめるときに、最低半年くらいの準備期間を必要とする人です。じーっと見続けたり、少しづつ触ったりしながら、心を慣らしていくのだと思います。


あだきち君が、iPadで、何か描き始める日がきましたら、またご報告します(^^)。