2016年2月13日土曜日

おでかけ

息子は朝から移動支援でおでかけ。
朝八時半に、お迎えのワゴン車が家まで来てくれた。
挨拶しながら車内を覗きこむと、元のクラスメートがにこにこ顔で座っていた。
スタッフの方々にいざなわれ、息子もウキウキとした表情で、乗り込んで座る。
今日は、どこへいくのだろう。

移動支援という福祉サービスを利用しはじめて、今年で六年目になる。

お出かけにつれていってもらうようになってしばらくしてから、あの東北の大震災があった。
うちのあたりは、震度5強。家屋に被害はそれほどなかったけど、本棚の本は滝のように落ち、洋服ダンスが壊れた。

息子は当時中学一年。泣いたり叫んだりは、一切しなかった。おびえた様子もなかった。
けれども、その後、ものをあまり食べなくなり、声もほとんど出さなくなった。
夜は服を脱がず、何かあるとすぐに飛び起きる。パニックは起こさない。気持ちを押しめていることが、食欲や発生に影響しているのだろうと思えた。

学校はすぐに授業を再開したけれど、食べず、眠れずという状態では、登校させる気にならなかった。余震がつづいて不安だったこともあり、通っていた療育教室も、移動支援も、しばらくは休ませようと思っていた。

けれども、移動支援のスタッフさんが、「こんなときだから、近場で気晴らしを」と、あたたかな言葉で誘ってくださった。療育の先生方も、「いつも通り暮らすことが、気持ちを取り戻すのに一番必要だから」と、私を説得してくださった。


不安だったけれど、移動支援と療育、ともに再開。もちろん学校にも登校した。
息子はまもなく、よく食べて眠れる生活を取り戻してくれた。


震源から何百キロ離れたところでも、重度自閉の子たちは、大変だった。
普段通りの暮らしを取り戻すのに、周囲の多くの方々の理解と支えが必要だった。

震源にいて、暮らしをすぐには立てなおすべくもなかった方々は、どれほど、つらかったことだろう。




世の中には穏やかでない情報が多くながれている。
戦争、不況、国際的ないさかい、天災……
そんな報道をみるたびに、心から思う。
いろいろな事情、理由で、繊細すぎる命を持って生まれてしまった子どもたちと、彼らを囲む人々みんなが、ずっと、安心して暮らせる世の中になるようにと。