有間しのぶ「その女、ジルバ」
Twitterかどこかで目に入った、電子本サイトの広告が気になって、お試し版を読んでみたら、そのまま一気に引き込まれて、既刊分をKindleでダウンロードして、読了。
なんか、このパターン多いです。
いいのか悪いのか…
まあ、いい作品に出会うこともあるから、いいことにしておきますか。
(ネット広告のカモと言われても仕方が無いorz)
(あ、でも電子本マンガの広告って、たいてい、グロいですよね。残虐だったり悲惨だったり悪趣味だったり。ああいうのは絶対さわりません。夜眠れなくなってしまう…)
■働くこと・老い・震災・戦争
さて、「その女、ジルバ」は、いま、第一巻が、Kindle版で期間限定無料になっいます。
試し読みの方は、お急ぎください(2017年9月29日までとのこと)
ざっと内容の説明を試みますが、いま、脳の体力がほんとにないので、浅~い説明になりそうです。(T_T)
四十歳になった独身女性、笛吹 新(うすい・あらた)は、加齢を理由に職場を配置替えされ、スーパーの倉庫で荷物運びをしています。
誰にでも出来る単純作業で、一生懸命働いても、体を壊したらリストラ対象にされるだけ。なんの希望もありません。不況の世の中では、収入があるだけ幸運というべきかもしれないですが、老後の蓄えを作るには足りず、不安ばかりが膨らんでいきます。
転職をするあてもなく、恋愛からも遠ざかり、上司からは侮蔑的に「おばさん」呼ばわりされる日々のなかで、新(あらた)は、生きがいを見失ってしまいます。
そんなときに、新(あらた)は、四十歳以上のホステスを募集する奇妙なBARを見つけます。
自分を変えたい一心で、そのBARに飛び込むのですが、あろうことか、マスターに若すぎると言われて、敬遠されてしまいます。
けれども、新(あらた)の気立ての良さを「心眼」で見抜いた、老ママの推薦で、当面は週末だけの見習いとして、シフトに入ることになります。
やがて、老ホステスたちやマスター、そして亡くなった初代ママである、ジルバという女性の、とてつもなく数奇な運命の物語に触れるうちに、新(あらた)は変わっていきます。
ジルバは、ブラジル移民として時代に翻弄され、身内に裏切られ、最愛の夫や子どもたちを皆失って、それでもなお、大切な仲間たちを支えて、誰よりも笑いながら生きていった女性でした。
四十歳なんて、まだまだ伸び盛り。
生き方なんて、変えようと思えば、いつからでも、どうにでも、変えられる。
心にそう刻み込んだ新(あらた)は、職場の倉庫で背中を丸めて自信も輝きも失っていた頃とは見違えるように、魅力的な女性になっていきます。
■一周回って重なってくる、昭和と平成
・・・という説明だけだと、一人の女性の成長物語という印象になってしまいますが、本当にここに書きたいのは、本当はそういうことではなかったりします。
「その女、ジルバ」は、見通しの持ちにくい閉塞感に包まれた今の日本と、人の命や尊厳が紙くずのように扱われていた戦中・戦後の日本とが、不気味なほど重なって見えてくる作品です。
かつて、終戦直後に情報から隔絶されていた日系ブラジル人社会で、日本の敗戦を信じようとしない「勝ち組」と、敗戦を冷静に受け止めようとした「負け組」とが抗争し、情報格差を利用した詐欺事件が横行したり、テロによる死者まで出たといいます。
いまの日本は先進国と呼ばれて久しく、情報化社会でもあると言われているにも変わらず、とてもそうとは思えないような言論の対立や事件が、結構な頻度で起きていなくもないような……
はい、体力切れ。orz
現在、四巻まで電子化されています。
続刊が楽しみな作品です。