2019年10月21日月曜日

成人後の暮らしと、療育の可能性


あだきち君の生活は、シンプルです。

平日は、介護施設で半日過ごし、夕方帰宅。

週に三回ほど、施設のあとに、介護福祉のサービスで、お散歩に連れて行ってもらっています。


土曜日は、福祉サービスでのおでかけ。
日曜日は、お父さんと食材の買い出し。



特別支援学校を卒業してから、ずっと、この繰り返しで過ごしています。

在学中には民間の療育教室にも通っていましたが、そちらも「卒業」しました。

年齢の上限があるものではないので、やめずに続けることもできたのですが、私の体力がもちませんでした。


療育教室の名前を、あだきち君は、やめてからも三年間、ことあるごとに言い続けていましたが、四年目に入って、口にしなくなりました。


療育をやめてしまったことを、あだきち君に申し訳なく思う気持ちはあります。

けれども、親が老いてくれば、遅かれ早かれ、いずれできなくなることではありました。
仕方がなかったと思います。



あだきち君が、いまの、穏やかで変化の少ない生活について、どう思っているのかは分かりません。


もしかしたら、不満はあるのかもしれませんし、もっと新しい経験をしたいと感じることもあるのかもしれません。


ただ、精神的には、安定はしている様子です。




けれども、ダイニングテーブルの、あだきち君の椅子には、療育の道具が入ったバッグがかけてあります。

療育をやめて、もう四年以上になるのに、そのバッグだけは、絶対に動かそうとしません。家族がそれを片づけようとしただけで、怒って止めにきます。


療育のバッグを動かさないことに、あだきち君の何らかの思いがあるのだと思います。


もしかすると、勉強がしたいのかもしれません。

でも、自分で道具を出してきて、勉強しようとはしないのです。
私に催促をすることも、ありません。

あだきち君にとって、自宅での学習は、常に、私と差し向いで行うものでした。

自立して、読み書きできるようになってほしいと願い、そう教えようとし続けましたが、とうとうかないませんでした。



あだきち君が、読み書きをするのは、いまでは介護施設で連絡帳を書くときだけに限られています。

施設の職員さんが、そばについて、その日のランチのメニューや、リクレーションでやったことなどを、口添えして書かせてくれています。


ほとんどは、職員さんの口述を書きとる形のようで、自発的に文章を書くということは、いまのところないようです。


自分で文章を書ける日がくればいいのにと、いまも私は願っています。


「自閉症の僕が跳びはねる理由」他、魅力的な本をたくさん執筆されている東田直樹さんのように。


あるいは、「もう闇のなかにはいたくない―自閉症と闘う少年の日記」の著者である、ビルガー・ゼリーンさんのように。



そのために、何かしてやれることはないかと思いつつ、方策が見いだせないまま、月日が流れていきます。





重度自閉症で発語もほとんどない、ビルガー・ゼリーンさんの本が出たときは、本当に本人が書いた文章であるのかということについて、かなりの騒動になったと聞きます。

そのときのスキャンダルに衝撃を受けて、文章が書けなくなってしまったとも。

その後、どうされているのか、気になります。


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検索してみたら、ウィキペデアに、彼の記事がありました。


Birger Sellin

Am 24. Juli 2013 wurde in Stern-TV ein Feature über den inzwischen 40-jährigen Birger Sellin mit dem Titel Ein Autist sucht Kontakt mit der Außenwelt gesendet.



2013年に、40歳になったビルガー・ゼリーンさんについてのテレビ番組が放映されたようです。


もう一つ著作が出ていて、

「ich deserteur einer artigen autistenrasse. neue botschaften an das volk der oberwelt」


というタイトルのようですが、、日本語への翻訳はされていないようです。

kindle版は入手できるようですが、ドイツ語は、私にはちと厳しいです(T_T)。



2013年に40歳だったということは、いまは46歳でしょうか。


「もう闇のなかにいたくない」を読んだのは、あだきち君が、まだ幼児だったころでした。



あだきち君が四十歳になったころ、どんなふうに暮らしているのか、まだ想像もつきません。


少しでも生活の楽しみや精神的な豊かさが増してくれるように、まだまだ考え続けることになりそうです。












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