2017年6月2日金曜日

「学校」を出たあとの重度自閉症の子の暮らし…あだきち君の漢字練習


あだきち君が八歳のときに書いたもの



PCのハードディスで、懐かしいものを見つけました。

上の写真は、2007年の夏に、夏休みの宿題として、書写をしていたものです。



「くるり」というグループの、赤い電車という歌の一節です。



赤い電車


曲を聴きながら、がんばって、何枚も、何十枚も、練習していたものでした。



今年二十歳になるあだきち君は、いまでも勉強を続けています。

1日の勉強時間は、長くても三十分ほどですが、あだきち君にとっては、とても大事な時間となっているようです。

なにしろ、私(おかーさん)が勉強の時間を忘れていると、アピールが凄いのです。

どんなアピールかというと、勉強道具の入ったバッグを、何度も何度も持ってきて見せて、

「かける?」

といって、フックにかけたり、食卓の椅子にかけたりするのです。勉強するときに、かならず持ってくるバッグなので、それを再現することで、勉強したい気持ちを表現しているのだと思います。

「じゃ、勉強しようか」

と声をかけると、すぐに用意して着席できますから、「勉強する」という表現は理解しているのだと思いますが、自分の口から、ストレートに「勉強したい」「勉強する」という言葉を使うことが、まだ難しいのでしょう。そのあたりも、課題の一つです。


このところ、口に手をいれて「おえー」っとしたり、自分の頭をバンバン叩くなど、極端な自己刺激行動が増えてきて、どうも情緒不安な様子なので、勉強の時間を少し増やすことにしました。


勉強のほうの今週の課題は、文章をしつかり読んで、質問に答えることと、新しい漢字熟語を少し覚えること。それから、計算問題などを、一人で仕上げて、間違ったところを、自分で消して書き直すこと。

ふるまいの課題は、作業中などに、口をしっかり閉じていること。

声をかけながら、一緒にがんばっています。


今朝は漢字の書き取り問題を中心に、三十分ほど頑張りました。

最近、繰り返し間違えるのが「父」「母」。

「ちち と はは」という問題で、必ず「母と母」と書いています。「父」という漢字は、ちゃんと「ちち」と読めるのに、なぜか書き取りになると、父が母に入れ替わります。

今日は、「方角」を「方魚」と書いていました。「角」の字は、結構前に練習して、覚えていたはずなのですが、しばらく書かないうちに、「魚」とごっちゃになってしまったようです。たしかに、上半分のパーツ、よく似ています(^_^;。


今朝の勉強中は、よく集中していて、視線もよく合っていました。
三十分ほど、みっちりやったのですが、その間、常同行動のたぐいは一切出ませんでした。あだきち君なりに、充実感があったのだと思います。

常同行動のことは、お世話になっている施設や福祉法人のスタッフの方々も、ずいぶん心配してくださって、適切な関わりを模索していただいています。

特別支援学校を卒業したあとの、長い人生を、どうやって充実させて、心穏やかに暮らしていくか。

重度の知的障害者にとっての、大きな課題です。

言葉を話さない、あだきち君の気持ちを汲みながら、道を探していこうと思います。