2005年11月14日月曜日

【過去日記再録】あだきち君、七歳。小学一年生



 GABAの量を減らして、四日になる。

  復活した常同行動のうち、一番目立つのは、自己刺激系のものである。

 目の前で手のひらや鉛筆らちらちらさせる、貧乏ゆすり的な行動を続ける、鉛筆などの細長いもので何かを叩き、カチカチという音を延々と聞き続ける、などである。

 どれも、それほど深刻なハマりかたではなく、声を掛けたり、何か意味のある課題にさそったりすると、さっと消失することが多い。

 ただ、学校にいるときだけは別で、よほど強く声をかけないと、自己刺激を停止できないことが多いようである。学校生活では、あだきち君は、不規則かつ膨大な刺激にさらされつづけて、疲弊することが多いので、自分でコントロールできる自己刺激行動をとることで、安らぎを得ようとしているのではないかと思う。


2005年10月17日月曜日

【過去日記再録】 夜泣き、常同行動……あだきち君七歳



ゆうべ、短時間だけども、あだきち君が夜泣きをした。

鼻の粘膜が気持ち悪いことで起きた夜泣きで、ほとんど忘我状態の大パニックと言っていい状態だったのに、二十分ほどで、憑きものが落ちたように寝入ってしまった。

以前なら、そこまでのパニックになると、落ち着くまで最低でも二時間、場合によっては徹夜を覚悟していたものだ。小学校入学前までは、真夜中に発作的に笑い続けるということも、ときどきあった。笑いもパニック同様、何をどうしても止められなかった。

大脳辺縁系や基底核の抑制がうまくいかないために、ああしたことになっていたのだろうか。もしそうなら、それが短時間で止められるようになったということは、辺縁系や基底核の働きが正常に近づいているということなのだろうか。そうだったら、どんなにいいだろう。

さて、今日は雨降り。
あだきち君の常同行動および、問題行動が悪化する天候である。

GABAを飲み始めて以来、家では窓を執拗に確認する行動はすっかり消えているのだけど、学校では少し残っているらしい。

また、今日は先生の目を盗んで、チョークの粉が溜まった箱に手をつっこんで、なめるなどしたようである。異物を食べるという癖も、家ではもう見られなくなっていたのに、やはり学校では出るのだった。

できれば、そういう問題行動が出る時間帯も確認したい。



2005年10月13日木曜日

【過去日記再録】GABAサプリ……あだきち君七歳



 あだきち君にGABAのサプリメントを飲ませるようになって、五日になる。

 飲ませて以来、あだきち君を縛り付けていた常同行動や、強迫神経症的な行動は、大半が消失し、復活の気配もない。

 いったいあだきち君の脳内で何が起こっているのか。
 ネットで読みかじった半端な知識をもとに、自分なりに整理してみる。




 GABAは、抑制性の神経細胞で働く、神経伝達物質である。

 脳内には、抑制性の神経細胞がたくさん存在していて、記憶や知能の発達、てんかん発作の抑制などに深く関わっているという。とくに、強迫神経症や常同行動を引き起こす部位であるという、大脳基底核には、GABAがたくさん含まれているらしい。

 自閉症のひとの遺伝子を調べると、GABAの受容体を作るための遺伝子に異常が見られる場合が多いという話もあった。

 また、フェニルケトン尿症で、自閉症状を呈する人の脳内には、セロトニンとGABAが少ないという調査結果もあるという。

 セロトニンは、大脳基底核にあって、やはり抑制的な働きをしているため、強迫神経症などでは、セロトニンの機能をたかめる抗鬱剤(SSRI)が有効な治療薬となるという。

 セロトニンについては、まさか抗鬱剤を飲ませるわけにもいかないから、ひとまず置くとして、とりあえずGABAの補填を試してみようと思い、GABAサプリを取り寄せたのである。

 その結果、びっくりするような効果があったことは、上に書いた。

 その後、いろいろと調べてみると、GABAの働く抑制性の神経細胞が、言語習得の臨界期に深く関わっていることが分かった。なんでも、抑制性の神経細胞が機能しないノックアウトマウスを作ったところ、脳内に臨界期が起こらなかったというのである。マウスは言語能力を持たないから、臨界期は言語習得のものではなくて、視覚刺激の処理に関するものである。しかし言語の臨界期も、同じように抑制性の神経細胞の働きによって成立しているのだとすれば、それが足りなければ言語の臨界期は起こらないことになってしまう。

 もうすぐ八歳になるあだきち君は、いまだに自発語を発しない。文字の読み書きはできるし、エコラリアもある。簡単な単語は理解する。足し算も簡単なものならできる。知能がないわけではない。なのに、「全くしゃべらない」のである。

 私は、あだきち君は、まだ言語習得の臨界期を迎えていないのではないかと思った。

 いくら、単語の音声情報を多量に記憶しても、それと意味とをマッチングすることができても、コミュニケーションの場で「運用する」ということができなければ、何にもならない。言語習得の臨界期は、その運用に必要な脳内の複雑きわまりない神経回路を一気に作り上げる、奇跡の時期なのである。どんな子供にも授けられるはずの、その奇跡が、あだきち君にはまだ来ていない。

 GABAがやたらと「効いた」ことで確認できたと考えていいと思うのだが、あだきち君の多動や強迫神経症的な行動は、抑制性の神経細胞の働きの弱さを表しているのだと思う。

 それらの神経細胞のサボタージュが、言語習得の臨界期を遅らせていることの原因だとすれば、GABAやセロトニンの補充によって抑制系を叩き起こせば、遅まきながらも臨界期が起こるのではないか。

 セロトニンも補強できればなおいいのだが、まさかあだきち君に抗鬱剤を飲ませるわけにはいかないので、食品などからうまく摂取できるように、いろいろ考えてみようと思う。